井戸茶碗の定義って何?どんな茶碗を井戸茶碗というの? 今回は井戸茶碗について、その特徴や分類を詳しく見ていきたいと思います。
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井戸茶碗とは何か?
井戸茶碗(いどちゃわん)は李朝の時代に製作された高麗茶碗の1つと言われています。当時、日本の茶人に大変好まれた茶碗であり、「一井戸 二楽 三唐津」と言われた程の名器です。井戸茶碗の名称の由来は諸説あり定かではありませんが、有名な話として井戸茶碗を見込みから覗き込んだ時に井戸のように深くみえることから井戸茶碗と名付けたのだとか。井戸茶碗の魅力はなんといっても寂びた風景でありましょう。美術館が所蔵する名碗の数々を見ると、いかに長い歴史を経て今ここに現存していることをしみじみと実感出来るはず。実物をじかにみると、轆轤を使いながらも完璧な形状を保たず、偶然に出来たゆがみや割れ等が自然体で現れていることに感動するはずです。
井戸茶碗の特徴
井戸茶碗には幾つかの約束事があります。これらを満たすと名碗と認定されるのだとか。 ただ、約束事を全て満たす作品はおそらく無いはず。もしあったとしたら、それは後世に意図的に作成されたものと勘ぐってしまいますね。
枇杷色(びわいろ)の釉薬
黄色がかかった茶色を枇杷色とよんでいます。この色味をしたものが名碗の条件。写真で見ると非常に綺麗な発色をしていますが、実物はそれほど綺麗な発色はしていないものが多いです。薄い茶色と薄い灰色を、7:3ぐらいの比率で混ぜ合わせて出来るような色合いのものがほとんどではないでしょうか。
貫入(かんにゅう)
茶碗の肌に現れる細かいヒビ(表面だけに入っているヒビです)のこと。一様なヒビではなく、大きいものと小さいものが入り交じっていると大変赴き深く見えますね。
竹節高台(たけぶしこうだい)
竹の節のような形状をしていて、高さがある高台が良いとされています。ただ、高すぎると馬上盃になってしまいますね。
轆轤目(ロクロめ)
3段~5段ほどのロクロ目が残るのが約束とされています。ぐるぐると回しながらつくる上で生まれるものだとか。ただ、名碗と呼ばれるものでも、轆轤目はなかったりします。
梅花皮(かいらぎ)
高台周辺にできるイボイボの縮れのことを梅花皮と呼びます。刀剣の手元に滑り止めのために施す鮫肌模様ですね。井戸茶碗はこれがないとちょっと物足りなく感じてしまいます。
渦巻き兜巾(うずまきときん)
高台のど真ん中にポチョンととがったあとを兜巾と読んでいます。渦を巻いているとなお善しです。
目跡(めあと)
重ねて焼くために3~5つの目跡があるとされています。が、大井戸茶碗は重ねて焼かないため目跡は出ず、小井戸茶碗は重ねて役から目跡がでるという説もでており、必ずしもあると良いとも言い切れません。事実、大井戸茶碗の名碗の多くは目跡が無いと思います。
井戸茶碗の種類
井戸茶碗もいくつかの分類に分けられます。今回は代表的なものを紹介したいと思います。
大井戸茶碗
大ぶりで堂々とした器形が特徴です。他の分類の井戸茶碗と比べて名碗が大変多いですね。
- 銘:
- 喜左衛門
- 所蔵:
- 大徳寺孤篷庵蔵
小井戸茶碗
大井戸と比べて、すこしサイズが小さく、高台が小さいものを小井戸茶碗に分類するようです。ただ、小井戸の中には大井戸並みの存在感を示すものも多いですね。
- 銘:
- 忘水
- 所蔵:
- 根津美術館蔵
青井戸茶碗
青味が多くはいった茶碗で、肌がすこしざらっとしているものを青井戸とよびます。また、高台の上から口縁まで緩やかなカーブを描くこと無く、一直線で作られていますね。
- 銘:
- 常盤
- 所蔵:
- MOA美術館蔵
小貫入茶碗
小井戸茶碗にちょっと届かないけれども、貫入だけは素晴らしい茶碗を小貫入に分類するようです。有名な茶碗としては「長崎」あたりでしょうか。
- 銘:
- 楽天
- 所蔵:
- 畠山記念館蔵
井戸茶碗一覧
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出典
- wikipedia